私たちが、小さい頃から何の疑問も持たずに使ってきた「新宮弁」。成長して都会に出ていった皆さんは、その土地で使われている言葉と故郷・新宮の言葉との違いについてどのように思われたでしょうか?そして、その後、故郷の旧友に会ったり、帰省したときなどにふとついて出る新宮弁。あなたは新宮弁をどう思いますか?

万人が認める新宮弁の達人にして新宮弁研究の第一人者・城かず坊先生が、新宮弁の深淵に迫ります。それでは、よろしくお願いいたします。(編集長・八咫烏)
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【ぐえる】  山やガケが崩れること(古語・くゆ、九州北部「くえる」、長野「くいた」)
【ぼちこむ】 地面が陥没すること。穴に落ちること
【まくれる】 ころがり落ちること (広島「まくれる」)
【こぼつ】  建物などを取り壊すこと
【いぼつ】  穴を掘ること コタツの炭を掘り返すこと
【いける】  埋めること (伊豆・秩父「いける」、福岡「いくる」)
【わやになる】すっかりむちゃくちゃになる様子
【てんこぼし】陽射し・直射日光のこと
【あばぶい】 まぶしいこと(徳島・紀伊半島「あばばい」が多い。福岡「ばばいい」)(広島・島根「まばい」)

熊野に火山はありませんが、地震と台風は、やってきます。台風は日本有数の上陸地。東京あたりにフラフラとやって来る台風とは、「活きのよさ」が違います。

雨がカーテンのようにタテジマ模様を作り、強風に運ばれて絶え間なく押し寄せ、あたり構わず猛威をふるう・・。一年に一度は、この暴風雨のシャワーを浴びんと、どうも身体がシャキっとせんのぉー。「大型」などと聞くと、子どもごころに血が騒いだものです。

しかし、生活を支える地元の人は必死です。
「オーイ!。山ゃ、ぐえたドー!!」。
人々に緊張と恐怖が走ります。

NHKでは、「○○地区では土砂崩れが発生し・・・」と、スマしてニュースを伝えます。が、ここは「ぐえる」といきたい。山が、こう「ズズズッ、ズサーッ」と崩壊して、なにやらドエライことが起こったという緊迫感が伝わってきませんか。
さらに、緊急を知らせる大きな声が飛び交います。

「オーイ!。道ゃ、ボチこんでしもたドー!!」
NHKは、「○○地区では道路が陥没し・・」と伝えます。ウーン、しかし、ゲージツ的表現や感性の部分としては、私は「ぼちこむ」に軍配を上げたい。

なんど地球に穴があいたようで、生々しい臨場感を感じるではありませんか。穴に落ちることも「ぼちこむ」といいます。(トイレにボチこむと名前を変えます。これも生々しい。←そんなこと言わんでもエエ!)。

さらに、さらに悲鳴が上がります。
「オーイ!。○○の爺さゃ、谷ぃ、まくれこんでったドー!!」。

NHK・「外へ出た○○さん(75才)は、近くの谷に転落した模様で、安否が気づかわれています・・」と伝える。

ま、実際は人が「まくれる」ことは滅多になく、木材を「まくし込んだ」り、石が「まくれた」りすることがもっぱらです。でもたまに、熊野川に車が「まくれる」こともありますから、気をつけましょう。

台風一過の翌日は快晴。 ぼちこんでしもた道のそばには、倒れかけた小屋があり・・。
「もうアレも使いもんにならんワ。コボったらな(壊さな)アカン」とグチる。
大水(おおみず)に浸かってしもた畑では
「スイカもナンバ(とうもろこし)もやられてしもたワ。畑、イボ(掘)っていけた(埋めた)らなノ。
もう、わやに(むちゃくちゃに)なってしもト。さっぱりヤダ」と嘆く。

NHKニュースは
「一夜明けた現地では建物を取り壊したり、被害にあった農作物の後片づけに追われています・・」と伝える。
被災地には昨日の暴風雨がウソのように、まぶしい陽射しがふりそそぎます。
村人がつぶやきます。
「てんこぼしやあばぶいのう!」。(太陽がまぶしいぜ!)

次回は「健康編」です。

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