約1000点にもおよぶくじらの生態や捕鯨に関する貴重な資料を保管、展示する「太地町立くじらの博物館」。くじらに関しては世界一のスケールを誇る博物館として、捕鯨人たちの偉業を後世に伝えると共に、国際的な研究の場となることを目的として、昭和44年(1969)の開館以来活動を行っている。

江戸時代の網取式の捕鯨の様子が、具体的な捕鯨組の船団の配置と共に目にすることができる、国内でも数少ない本格的なくじら博物館である。

3階建ての館内には、くじらの歯や髭、骨のほか、絵巻や捕鯨用具、実物大のセミクジラ模型や骨格標本、古式捕鯨のジオラマ、くじら製品などくじらに関するものを幅広く展示している。

また、平成17年(2005)には、1890年代初頭にノルウェー北部で捕獲されたシロナガスクジラの全身骨格が、現在骨格を管理している日本鯨類研究所と下関市の協力のもと、全身骨格レプリカ標本として博物館前の広場に野外展示された。全長23メートルの全身骨格は、地球上で最大の動物としての迫力を目の前に感じることができ、くじらの町、太地にふさわしい展示物となった。

本物は、下関市にある水族館「海響館」内の「小松=ワローホール」(これは著者であり当時水産庁参事官であった小松とノルウェー学術会議会長のワロー氏が、シロナガスクジラ全身骨格標本の日本国内への展示に貢献があったとして、下関市長から命名されたもの)に展示されている。

ここにはシャチ一頭も飼育され、シロナガスクジラの全身骨格標本前の入り江を利用したショープールで、シャチやいるかのショーが楽しめるようになっている。平成10年(1998)にもシャチ一頭が捕獲されたが、こちらは名古屋港水族館に貸与されている。

さらに付属の施設として公園内に併設された、600トンの海洋水槽によるマリナリウム、ラッコ館、実物大の鯨船が入っている捕鯨船資料館がある。捕鯨船資料館は、南氷洋捕鯨で活躍した第十一京丸を陸上展示したもの。この船は極洋捕鯨(株)の捕鯨船として出漁後、日本共同捕鯨(株)移籍し、南氷洋捕鯨に21回、北洋捕鯨に20回の出漁を行った船。多くの太地出身者が砲手や従業員として乗船して活躍した。太地の歴史に欠かすことのできない船である。

(出典:歴史と文化探訪 日本人とくじら―尾張、伊勢・志摩、熊野、紀州、摂津・播磨、瀬戸内、土佐

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