hawaiiハワイ諸島の一番東側に浮かぶハワイ島。他の島と比べると、ダイナミックな大自然が魅力的な島である。その中でも、火山の存在が大きい。今なお白煙を噴き上げるキラウエア火山。最近は溶岩の近くまで見学に行けるツアーが人気だ。大自然を背景にしたマリンスポーツ、乗馬、星空ウォッチングなどのアクティビティも盛んである。リゾートという言葉でくくれることができないスケールの大きさが、ハワイ島の魅力である。

今も噴火を続ける活火山  間近で地球の鼓動を聞く

空と海に挟まれるようにして、黒く光る溶岩原が広がっていた。海岸の淵からは海へなだれ落ちる溶岩の熱で白煙が立ち上っている。日没前の柔らかい光が黒い平野を染め、見学者のシルエットが貿易風の中に浮かんでいる。上空には三日月が出番待ちの感じで静かに佇んでいた。

キラウエア火山はハワイ火山国立公園の中心にあり20年近く噴火活動を続けている。今年5月12日の母の日にプウオオ火口から溶岩が流れ出した。母の日に因んで「マザーズ・ディ・フロー」と呼ばれ、7月待つにはチェーン・オブ・クレーター・ロードを超えて海に注ぎ込むようになった。そのために大挙して観光客が詰めかけ、多いときには1日に4000名もが見学に訪れたという。

私たちはデコボコの溶岩原を進み溶岩に向かった。スニーカーの底をチクチクと刺す溶岩の牙。溶岩と溶岩の隙間から真っ赤な溶岩流がじわっと、ゆっくりと動いているのが見えた。ぱちぱちという音を風が運んでくる。1mほど恐る恐る近くに寄ってみる。猛烈な熱さ。熱気と冷気の入り交じった風が前身にまとわりつく。

体の右半分が熱く、左半分が涼しいという変な感じだ。へっぴり腰で溶岩流に木の枝を差し込むと先端がすぐにボッと燃え出した。その熱は1200度Cを超えるという。私の顔も溶岩と同じような真っ赤な顔になっていたに違いない。

細心の注意で溶岩見学

さらにもっと大きな溶岩流に向かった。ガイドは様子をチェックするために溶岩流に近づく。7mほど離れて立つ私のところに戻り、「ここは危ない」と言う。その理由はこうだ。

溶岩流の殻(クラスト化した岩石)はきわめて薄く不安定だ。草の生えた土の上を流れる溶岩は水分を吸収し、冷えた表面と燃えている内側の間に蒸気が内包される。内圧が高まるとそこが破裂して噴火と同じように爆発する。この溶岩流はその可能性を秘めているから危ない。ガイドはそのように説明してくれた。

我々は一歩引き下がり、溶岩を観察していると、ものの10分もしないうちにポンと大きな音をとどろかせ、畳20枚もあろうかという思い表面を持ち上げたのだった。

幸い爆発が小さかったので、火花や火柱や立たず火の粉も飛ばずにすんだが、まさに地球のマグマが生きているということを実感した一瞬であった。もし日本なら立ち入り禁止の標識が立てられ、はるか遠くから望遠鏡でのぞくというのが精いっぱいだろう。しかしハワイは違う。行くのは勝手です。リスクは自分で背負って下さい。生きるも死ぬのもあなた次第です。これがアメリカ流なのだ。

溶岩見学を楽しむには、熟達したガイドと一緒に行く、レインジャーの渓谷に従う、看板の注意書きをよく読むことが絶対必要だ。子供や喘息の人が行く環境ではない。現在駐車場から徒歩10分ぐらいで見学できるが、溶岩流の方向によっては1時間も歩くこともある。なにせ大自然が相手なので「安全」には細心の気配りをしたいものだ。

夕闇が迫ってくると、溶岩は赤からオレンジ色に変わり、黒い大海に赤く縁取られた島があちこちに浮いているように見えた。それは絵具ではなかなか表現できない幻想的な色だった。見学は日没時から夜にかけてがおすすめだ。

地球のダイナミックな鼓動を聞く

翌日ヘリコプターによる火山ツアーに出かけた。窓越しに眺めるキラウエア火山の白煙が広がっている。ヘリコプターは何度も旋回し高度を下げた。流れ出た溶岩は岩肌を焼き、火花を散らしながら海に落込み雲のような水蒸気を空高く舞い上げている。山と海とのせめぎ合い。ジュッという音が聞こえるようだ。

地球内部から吹き出たマグマは、キラウエアの地下深くのホットスポットに溜まった後、ガスを帯びて上昇し海底を貫き、噴火を始める、これが海底火山のの誕生だ。その後も噴火は続き、溶岩が盛り上がって海面にその姿を現し、新しい島となる。

一方地球の表面には何枚かのプレートと呼ばれる固い地殻が集まってできている。プレートテクトニクスと呼ばれる地球上の表面移動によって西へ西へと移動している。ハワイ諸島がある太平洋プレートは、北西に向かってゆっくりと動いている。このスピードは年間に6cm~10cmで100万年たてば60km以上も移動することになる。

したがってハワイ諸島の北西に位置するカウアイ島が最も古く、その誕生は500万年前。東側のハワイ諸島に近づくにしたがって島の年齢は若くなっていく。ハワイ島は海上に現れてまだ80万年ぐらいしかたっていない最も若い島なのだ。

それどころかキラウエアの噴火で流れ出た溶岩が海を埋め立て、現在の火山活動で面積は2平方kmも広がったという。つまり地球の一部はここで製作中なのだ。ハワイ島こそ「地球が呼吸している」ということを実感できる島なのである。

ひとつの島に、世界の11の気候が存在

ハワイ島の面積はハワイ諸島の中でももっとも大きい。他の7島を合わせたよりも広大で、四国の半分ほどの面積がある。一周400kmもあり、島という感じがあまりしない。そのためハワイでは「ビッグ・アイランド」という言い方のほうが一般的だ。

あるところではカナダのような広大な景観が展開していたり、火山地帯では地球創造がイメージできるエネルギッシュな景観が広がっている。ビーチもワイルドで美しい。

大自然のシンボルであるマウナ・ケア山は“白い山”という意味だが、海底からの高さは世界一で1万mもある。もうひとつマウナ・ロアは“長い山”を意味する通り、世界で最も面積が大きな山である。

2つの山々が島の中央、南北にどかっと座っているために島の気候は変化に富んでいる。北東から吹いてくる湿気を帯びた貿易風はマウナ・ケアなどの4000m級の山にぶつかり東海岸のヒロなどに雨を降らせる(余談だがヒロは雨が多いので人々の心情もウエットだと地元では評される)。

これと対照的にリゾートで有名なコハラ地区には乾燥した風が吹き抜ける。ヒロの晴天率が年間40%なのに、コハラの年間雨量はわずか200mmに過ぎない。またハワイ島の高山地帯はずっと冷え込むし、マウナ・ケア山頂ではスキーもできるのだ。中央部に位置するパーカー・ランチ(牧場)周辺は、温暖差がありスコットランドのような煙突が大きな家並みが続いている。

「世界の気候区分は13に分けられるのですが、ビッグ・アイランドにはそのうちの11も存在しているんですよ。ないのは砂漠と南極の気候だけです」と熱っぽく語るのはハワイ島観光局エグゼクティブ・ディレクターのジョージ・アップルゲートさん。
「これだけ気候と地形が変化に富んでいますから、いろいろなアクティビティが楽しめますよ」

4300mのマウナ・ケア山の頂上で眺める満天の夜空。ここには世界13カ国の天文台が並び、日本のすばる望遠鏡が建設されたことは記憶に新しい。また、米国で一番美しいといわれるハプナ・ビーチも広がり、コナ・コーストではスキューバ・ダイビングも人気だ。30mという素晴らしい透明度と、ダイバーにとっての永遠の恋人マンタ(イトマキエイ)に遭遇できるからだ。変化に富んだ地形を利用したチャンピオンシップ・ゴルフコースも島内に12もある。単なるリゾートという言葉では語れないスケールの大きさがハワイ島の魅力だ。

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