以前、日本人の名字についての記事をいくつか書いたが、偶然にも、最近NHKで「日本人のおなまえ」という番組が放送されていることがわかった。その中で、強そうな名字の中で「鬼」の付く名字として、奈良県吉野郡下北山村前鬼というところに住む「五鬼助義之」さんが紹介されていた。

ここは、今でも電気も水道もない辺鄙なところで、五鬼助(ごきじょ)さんが語った伝説によると、今から遡ること1300年以上前の676年頃、修験道の開祖として知られる役行者(えんのぎょうじゃ)が住んでいた。その役行者には「前鬼」と「後鬼」という鬼の夫婦が仕えていた。前鬼と後鬼はもともと人間にいたずらをして困らせていたが、その後、役行者の力で人間になった。

やがて、前鬼と後鬼は五人の子供をもうけたが、その名前を「五鬼助」「五鬼継」「五鬼上」「五鬼熊」「五鬼堂」といった。これら五軒の子孫は修験者などが修行の途中で利用する宿坊を営んでいたが、明治時代、修験道の衰退とともに修行者が激減したために山を去ることになった。

現在は、五鬼助家の第61代当主・五鬼助義之さん一軒だけ、川から水を引き、自家発電設備で電気を起こし、宿坊として修行者の聖地として頑張っている。鬼の子孫だという五鬼助さんの名字の「鬼」という字についてはいわくがある。この「鬼」という字の上部の角がない。活字にないので書けないが、文字として残っているものを見るとないのである。

ここで、一転、画面は熊野本宮大社の映像に切り替わる。本宮大社の宮司である九鬼家隆氏の登場だ。この「九鬼」という名字の「鬼」の字にも角がない。この名字の由来は、後醍醐天王が熊野詣をしたときに手助けをしたことで新しく九鬼姓を賜ったという。読み方は「クカミ」であったとのこと。角がないのは人のこころから邪気、邪心を取り去るという意味があるのだろうという。

鬼の交流博物館の塩見館長によると、仏の心を持っていると鬼に出会っても悪いことは起こらない。悪い心を持っていると災いが起こるという。鬼と神は一心同体のような存在である。秋田の鬼神社は一夜にして村を作った鬼に感謝して祀っているし、秋田の「なまはげ」の行事も鬼と敵対関係にないことを見てもわかるという。

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