bunka-rekishi-120x90重要文化財 旧西村家住宅(新宮市新宮7657)【地図】

JR新宮駅から駅前本通り商店街を少し歩いて右に曲がると、落ち着いた雰囲気の坂道に入る。その右側にある古い西洋風の建物は、「西村記念館」といわれ、新宮出身の建築家、西村伊作(1884-1963)が自ら設計した自宅である。日本で最初の居間式住宅として平成22年に国の重要文化財に指定されている。

nishimura-kinenkan1建てられたのは大正時代の初め、1914年(大正3年)のことだが、中に入ってみると、南側の庭に面した明るい部屋にテーブルが並び、もう百年近く前のものなのにその雰囲気は古さを感じない。今の日本では、どの家もまず南向きに明るい縁側や居間を作り、家族が団欒の時を過ごすことを第一に考えた住宅が一般的だが、伊作はそのような現代の日本の住宅建築の開拓者であった。

伊作の新しい考えに共感した与謝野寬・晶子夫妻や陶芸家富本憲吉とその家族などの数々の文化人が、明治から大正時代にかけて交通不便な新宮の地を訪れ、地元の若い文学者佐藤春夫らとともにこの建物で交流を深めた。

ところでこの記念館には、様式のテーブルや本棚などの家具とともに、油絵や陶芸がいたるところに配置されているが、それらも伊作自身の作品だ。

また、東京の神田には、「文化学院」という芸術活動を中心とした学校があるが、それも1921年(大正10年)に西村伊作が私財を投じて創立したものだ。そこでは、伊作の友人でもある与謝野寬・晶子夫妻をはじめ、北原白秋、山田耕作、菊池寛、川端康成、佐藤春夫らの当時一流の文学者や音楽家、画家たちが協力して、芸術活動を中心とした自由な教育を行った。

こうして住宅の建築や教育の方法について伊作が実践してきたことは、戦後の民主主義社会になってようやく広く実現できるようになったことを考えると、伊作の先見性に驚かされるばかりである。

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