2月12日、競泳の池江璃花子選手が自身のブログで白血病に罹患していることを告白した。2018年8月ジャカルタで開催されたアジア競技大会で、日本選手として史上初の6冠達成という快挙を成し遂げた彼女は、来年の東京オリンピックを控え、今、全国民に最も期待される選手の一人である。

この告白に対し、オリンピック担当の櫻田大臣が、「日本が期待している選手だから本当にがっかりしている」「1人リードする選手がいると全体が盛り上がる。そうした盛り上がりが若干下火にならないか、ちょっと心配している」と発言して批判を浴びた。言葉の切り取りだけで批判するマスコミも問題だが、配慮に欠けた発言であったことは確かであろう。

一方、毎日新聞の特任編集委員、コラムニストである近藤勝重氏の発言が気になった。氏は、10数年、がんシンポジウムのコーディネートをするなどさまざまな活動でがんと戦う患者や医師の姿を数多く見てきている。そのような、がんについてのこれまでの経験を踏まえて、ラジオ番組の中で次のように述べていた。

「自分自身も50歳過ぎにがんに罹ったが、その数十年前に父親が白血病になった。その時、担当の医師から、父親の人間性とか気持ちの持ちようはどういう方ですかと質問を受けた。」つまりがんを治療する時には、患者の心のありようが大きなポイントになるということを指摘している。

「がんを宣告された時に、その事態をどのように受け止めるべきか。自分は理不尽な目に会っていると思う人は多いが、それはダメだ。そのような世界から生きて生まれ変わりなさいということを教えてくれているのだ。ある意味、成長に必要であったと思うことが大事である。」

「笑って、歌って、しゃべって、イメージ豊かになること、心の浄化作用に励むことが免疫力をつけることになる。今から必要なことは余裕をもって治療にあたることである。白血病と言っても様々な種類、症状があり一概には言えないが、早期発見なら白血病でも根治出来る可能性も高い。」

この、近藤氏の発言を聞いて、私自身も自分の経験を思い出した。つい2年半少し前のことだ。がんを宣告された時は一瞬頭が真っ白になった。60歳代半ばまで大きな病気をしたことがなくまさに健康そのものだったので、正直言って驚きは予想以上に大きかった。運命を呪って日々うつむいて生きることになるのか。そんな毎日が耐えられるものなのか、自信など全く持てなかった。

そんな私の考えを、近藤氏の言うように前向きにしてくれたのには理由がある。実は、ほぼ同時期に妻もがんを宣告されたのである。この事態はあまりにも大きすぎて、理不尽だと思う暇がなかった。二人同時にがんに罹り同じ月に手術を受けることになったことにショックを隠せない妻を見ていて、下を向いていてはどうにもならない、自分がしっかりと立ち向かわないといけないと思った。

そこで、私たちもがんをブログで公開した。この試練を乗り越えられたらその先にきっといいこともあるだろうとそう思うようにした。公開することで病に立ち向かう気持ちになれた。細胞が活発になって治癒できると思った。まさに、神が与えてくれた試練であろうと自然に思えたのだ。60歳半ばの老人でもまだまだ生きようとしていた。

池江さんは「神様は乗り越えられない試練は与えない」「自分に乗り越えられない壁はない」と決意表明した。彼女の、すでに命の何たるかを、人生の機微をも知り尽くしたような言葉に驚く。病は、医者の助けは必要だが治すのは患者自身であること、病に立ち向かう気持ちが治癒力、免疫力を高めてくれることを信じたい。古希間近になってやっとそのような気持ちになれた私と違って、彼女は弱冠18歳ですでに分かっている。

爽やかに、まっすぐに成長しながら苦難に立ち向かおうとしている池江璃花子選手に最大限のエールを送りたい!

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